2007年度参加者のJean-Yves Terreaultさんにご自身の体験を基に初心者のためのベーシックトレーニングアドバイスをご紹介いただきました。
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はじめに
2007年5月に開催されたオックスファム・トレイルウォーカーに参加する前、私にとって初めての経験だったもので、100kmを歩くと体はぼろぼろになるだろうし、チームメイトと疲れてけんかもするだろうし、最後は傷ついた爬虫類みたいに這いながらゴールするのだろうなと思っていました。しかし、確かにすこしばかり痛みもあって、まったく無傷でとはいえなかったものの、チームメイトと私は、笑いながら、走りながら、そして何よりも、お互いがさらに密接な関係を作り上げながら、ゴールすることができました。
私たちのチームは、全体で19番目、男女混合チームとしては3番目に、25時間48分というタイムでゴールしました。フルマラソンを経験したことが無いメンバーが2人いるようなチームにしては、悪くない結果だったと思います。このことからも、私たちのチームがどのような状況でスタートし、どうトレーニングしていったのかをお話できると思います。私たちが成し遂げたことは奇跡ではなく、イベント前のトレーニングのおかげなのです。私たちの成功の鍵は、何よりもトレーニングに、特にチームでのトレーニングにあったのです。このガイドは私たちの経験に基づいています。あなたの体力や状況に応じて、参考にしてもらえれば幸いです。
もし、あなたのチームが、トップを目指したり、限界まで走りぬくことを目指しているようなチームであれば、このガイドではおそらく物足りないでしょう。しかし、ほとんどのチームのように、完歩することが目的であるならば、このガイドにはいくつか役立つポイントがあると思います。私たちのチームが参加を決めた時も、100kmを完歩すること。それが唯一の目的でした。たくさんのトレーニングを重ねたのも、ゴールにたどり着けるという確信を得たかったからなのです。
トレーニングを続ける中で、私たちは、100km完歩のためにとても大切なチームのペースを身につけることができました。そのペースでは、24時間から30時間の間でゴールできそうだという目途もたてることができ、スタートが近づいてきた頃には、このタイムがチーム内で暗黙の目標になっていたのです。というのも、メンバーの1人が、月曜日からの出張のための準備と、その前に奥さんと過ごす時間を持つために、土曜日(訳者注:イベント2日目)には関西の家に帰りたいと望んでいたからです。
メンバーのコンディションや、チェックポイントでどれだけの時間休憩するか(どこでどれくらい寝るのか、といったことも含めて)といったことも直接関わってくるのですが、ゴールタイムの目標が何時間であれ、イベントを楽しめるかどうかは、イベント前の準備とトレーニングにかかっています。あなたがチームメイトのことを以前からとてもよく知っているとしても、全員がウルトラマラソン・ランナーであるとしても、私とチームメイトは、チームでのトレーニングは絶対に必要なことだと信じています。ファンドレイジングも含め、一緒に練習すればするほそ、チームの結束力は高まっていくのです。
もしあなたの体調が悪ければ、その時にはトレーニングを始めるべきではないことは、言うまでもないでしょう。しかしまた、トレーニングによってナンバーワンアスリートになる必要もないのです。個人的なレベルで、今からもう少しアクティブな生活を送るようにすればいいのです。体力トレーニングを急激に増やしていくと、けがをする可能性も高くなってしまいます。トレーニングを始めてすぐの頃は、体自身も運動する準備ができていません。そのような時にけがをすると、回復するまでに多くの時間がかかってしまいます。
トレーニングのやり方には何種類もあります。もっとスポーツをする、ジョギング、ジムに通う、水泳、エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う(イベントコースの中には上りや下りが沢山あります)、最寄り駅の1つか2つ手前の駅で降り、そこから歩いて帰宅する、などなど。ある医者によれば、20分以下の運動では、心肺や筋肉にあまり効果がないそうです。ランニングで言えば、1週間に走る距離を、10~20%以上増やさないようにしたほうがいでしょう。走るのが初めての人は、まずは短く等しい間隔に1分ずつ歩きながらの休憩を含めつつ走り、慣れてきたら徐々に距離を伸ばしていくようにすると良いでしょう。
また100kmを完歩するためには、スピードやパワーをつけることではなく、スタミナをつかむことに集中しましょう。もし可能であれば、トレーニングの日には、色々な種類のトレーニングを組み合わせたり、長い時間トレーニングするようにするとより効果的でしょう。例えば、友達とサッカーをする時には、持久力をつけるために、グラウンドまで走っていくとか、自転車で行くと良いでしょう。核となるような筋力トレーニングをすることで、コースの後半で更なるパワーを出すことができるようになります。ボディーバランスを維持し、筋肉の磨耗を減らすために、ヨガのようなストレッチもトレーニングに加えてみてください。自分でマッサージをできるようになれば、より安心してイベントに臨むことができるでしょう。
チームでトレーニングする際には、スタミナの向上と、チームのペースをつくることが大切です。最初はおそらくメンバーで歩くペースが違うでしょう。登りが得意な人もいれば、下りが得意な人もいるでしょう。実際のコースでトレーニングするのもよいでしょう。実際のコースでトレーニングすることで、自分たちがどういったことに出くわすのかがわかります。私たちのチームは、1人しか実際のコースを歩けませんでした。その結果、イベント当日、何度か道を探すようなこともありました(コースはよくマーキングされていますが・・・)。ただ、同時に、コースの全てが私たちには新しいことだったので、道中わくわくしていたのもそのためでしょう。
もしあなたがイベント中に仮眠をとらないのであれば、一度徹夜でのトレーニングを行っておくのもいいでしょう。これには、2つ目的があります。1つ目は、一晩中体運動し続けることに体を慣れさせるためです。事前にカフェインの入った飲み物を飲むと良いのですが、飲みすぎるとトイレに行きたくなり、脱水症状を引き起こしてしまうので、気をつけましょう。2つ目は、ランプを使っての歩行になれるためです。夜間トレーニングは、金曜日の夜に実行するのが良いでしょう。そうすれば、月曜からの仕事までに2日休むことができます。イベントの状態を体験するために、徹夜トレーニングにも挑戦してみてください。
私たちは、このようなトレーニングも含め、5、6回チームトレーニングを行いました。初めは20km以下の短い距離から初め、毎回距離を伸ばしていきました。最後から2回目のトレーニングでは、50kmを越える距離も歩き、これには私たちも満足しました。最後のトレーニングはイベントの1、2週間前に行いましたが、最も短いトレーニングでした。イベントの3週間前に長距離のトレーニングを行うことは、お勧めしません。Dean Karnazasでもない限り、自分が思うより回復には時間がかかるものなのです。最後のトレーニングでは、長距離を歩くよりも、イベント当日に向けての準備について話し合いました。
イベントにおいて、精神的な面も、体力的な面と同じぐらい大切です。この点こそ、私とチームメイトが、自分たちのチームが一番だと思っている点です。私たちは、このイベントを心から楽しんだと言えますし、その鍵はチームとしてトレーニングや準備を重ねたことにあります。あなたは自分のチームメイトのことを良く知っていると思っているかもしれませんが、一緒に働いたり、ビールを飲む関係と、20~48時間という長い時間をタフな山中のコースで過ごす関係とでは、大きく異なります。私たちの場合は、トレイルウォーカーを通してメンバーと友情や信頼関係を強めることができましたが、知人の中には、コース上で友情を失ってしまった人もいました。チームでトレーニングや準備をすることで、そういったハプニングが起こるのを減らすことができます。
チームでのトレーニングの最大の役割は、あなたのチームメンバーをよく知ることです。どんな時にメンバーを励まし、譲歩し、冗談を言い、起こしたらいいのか。こういったことが、特にイベントの後半になるにつれ大切になります。また、チームでのトレーニングを通して、メンバーとどんなことを話したら良いのかがわかりますし、冗談や気の利いた洒落も思いつくでしょう。これらが、イベントを通して、チームのモチベーションを維持することに役立つのです。
ただし、チームとの関係をトレーニングに限るのもよくありません。一緒に昼食や夕食を食べに行ったり、ファンドレイジングのためのイベントを一緒に企画し、開いたり(わたしたちは、レストラン、バー、ホテル、会社からいただいた景品を使ってファンドレイジング・パーティを開きました。またバーベキューパーティーを開いた他のチームの友達もいました)、トレーニングのことなどに関してメールの交換をしたりしました。私たちの場合は、幸運にも、Hash House Harriersというランニングクラブにみんなが所属していましたので、お堅い関係ではなく、冗談を言い合えるような関係でした。
重要な点は、イベント前にお互いを知れば知るほど、イベントをもっと楽しめる機会が増えたことです。さらに、不平を言う人を誰も好きではありません。イベントが終わってから気づいたことですが、私自身がそのような人になってしまっていました。このことを正直に認めます。それでも私のチームメイトはとても優しく、私に黙ってくれとは言わなかったんですね。彼らに感謝しています。
ここでは、道具から睡眠まで、多くのことについてふれます。
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チームメイトについて
まずは、最も大切な点、チームメイトについてです。オックスファム・トレイルウォーカーは、最も偉大なチームによるチャレンジです。各チェックポイントでは、次の区間に進む前に全員が揃っていないといけません。なので、スピードの速い人が、他のメンバーを置いてきた場合、チェックポイントで後から来るメンバーを待たなければならないので、非生産的になってしまいます。待っている間に、先に到着したメンバーの体は冷えてしまい、遅れてきたメンバーは十分に休めません。そうすると、下りでも(もちろん上りも!)スピードが遅くなってしまうのです。私はありきたりな言い方は嫌いなのですが、確かに、チームに「私:個」というものはないのです。イベントは、支援を必要としている人のためにあるのですが、それはチームメイトに対しても当てはまります。もし、あなたが何かの記録を打ち立てようなどと思うのであれば、別のレースに出たほうがいいでしょう。日本には、個人でもグループでも参加できるウルトラマラソンが多くあるのですから。
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食料について
食料に関して、ほとんどのチェックポイントには、それなりの量の食料があります。これは重要なので覚えておいてほしいのですが、もしあなたのチームがゆっくりしたペースでチェックポイントに到着することを考えているなら、チェックポイントには食料がわずか(例えば、好きな味のおにぎりとかパンがないとか・・・)だったり、まったくないこともありえるかもしれません。けれども、そこでボランティアの方々に文句を言ってはいけません。彼らは無給で働いていますし、文句は沢山食べたであろう通過済みの参加者に対して向けられるべきものなのです。なので、最悪の場合を考え、食料を準備し、自分で少し持ち歩くと共に、サポート隊に運んでもらったり、荷物運搬サービスを利用するとよいでしょう。
用意する食料は、自分が満足のいくもので(必要なエネルギーを供給できる)、おいしいもの(やる気がでるようなもの)がいいでしょう。燃焼されてエネルギーになりますので、クリームたっぷりのチョコレートやアーモンドチョコレート(個人的にはこれが好きです)のような高カロリーのものを食べるのを嫌がってはいけません。しかし、おなかを壊さないように、それらの食べ物に慣れておく必要もありますね。
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飲み物について
飲み物も大切です。各チェックポイントには、飲み物が数種類あります。もう一度繰り返しますが、カフェイン入りのものを飲みすぎると、トイレに行きたくなり、脱水症状を引き起こします。私はスポーツドリンクを飲んでいましたが(粉状になったものがあります)、それが良かったと思っています。他のメンバーは、水だけを飲んでいました。何が自分に合うのかは、人それぞれです。常に体内に水分がある状態にしておくことが必要です。イベント前直前にはいつもより多く水分を取って、スタートの時には、水分が十分に体に満ちている状態にしておくようにしましょう。
飲み物は、荷物の準備にも関係します。リュックを持つことは必須です。イベントの初めに、私とチームメイトは、ビニール袋を持って歩いている参加者を見て驚きました(しかも、このような挑戦には到底合わないだろうジーンズをはいていたのです)。もしアウトドア活動が好きなら、チューブのついた水を入れるバックが付いたキャメルバックを用意するのがいいでしょう。それは他の色々なイベントでも使えます。しかし普通のバックパックでも十分でしょう。
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靴や衣類などについて
さらに重要なのは、もちろん、靴です。もう一度言いますが、個人の好みと予算は人によります。私たちのチームメンバーの多くはトレイルラン用の靴を履きましたが、ウルトラマラソンランナーのチームメイトは、普通のランニングシューズを履いていました(ただ、とても足が丈夫な人でなければお勧めできません)。しかし、ハイキングブーツであれ、ジョギングシューズであれ、壊れることもあるということを念頭においておきましょう。私はこのミスを犯してしまったのですが、幸いにも壊れてしまう前に、チェックポイント4で新しい靴に履き替えることができました。替えの靴も用意しておくとよいでしょう。もし靴が壊れてしまうようなことがあるとすれば、前半で起こる可能性が高いので、荷物の配分をうまく考えることを、忘れないでください。
天候の変化に応じて気軽に脱ぎ着できるように重ね着しましょう。一番下に着るものは、発汗効果の高い服が理想的です。濡れると、冷たくなる上、なかなか乾きにくいので、綿は避けた方がよいでしょう。雨が降った時に体温を維持し、濡れてしまわないように、ウィンドブレーカーやレインジャケットも用意しておきましょう。山の中では夜間とても寒く、風も強くなるので、フリースの衣類があるといいと思います。また新しい靴下があれば、リフレッシュするのに驚くほど効果があります。
ウォーキングストックについてですが、これも個人によります。あれば体重移動に重宝しますが、事前に使って効果的に使えるように慣れておく必要があります。スティックのあるなしで、歩き方も変わってきます。この点は、他の道具でも同じです。イベント前に使用し、調整して慣れておくことが必要でしょう。
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睡眠について
睡眠をとるにしろ、とらないにしろ、暗い中で歩く必要が生じるはずです。なので、ランプは欠かせません。ヘッドランプは家でも何かのときに使えますし、値段もさほど高いものではなく、両手も空くのでとても便利です。しかしランプも時にトラブルを起こしますので、たとえ新品の電池を使っていても、もう一組用意しておくとよいでしょう。昨年、私たちは、けがをしたせいでチームメイトに置いていかれてしまった1人の参加者にコース上で出会いましたが(このようなことはこのイベントの精神にはあわない!と思いました)、もうまもなく真っ暗になるというのに、彼の電池は切れてしまっていました。私のチームメンバーはとても優しく、彼に予備の電池をあげました。またランプの使い方も事前にしっかり理解しておく必要があります。私の友人のチームメイトのように、暗くなりだす2時間前になって初めてパッケージを開けて取り出すといったことのないように。
睡眠の問題になると、意見は分かれます。もし寝るのであれば、よく寝むれ、体も回復できることでしょう。チェックポイント4はキャンプ場になっていて、もし希望すればキャンプをすることもでき、いい休憩になるでしょう。一方チェックポイント7は、屋内で仮眠を取る場所が用意されています。しかし、多くのチームが到着し、食事をし、話をしてまた出発する・・・という状況なので、ゆっくり寝むることができるという感じではないでしょう。また、しばらく運動をしないと、春の気温では筋肉は冷えてしまい、筋肉痛が悪化するかもしれません。もし寝るのなら、少し足を持ち上げて横になり、溜まった血液を足から逃がすとよいでしょう。これは、仮眠や、ちょっとした休憩の際にもお勧めします。
私のチームは、寝ないということを決めていました。このことは様々な理由から早くに決められていました。おそらく、1番の理由はチャレンジだったと思います。そして、他の物事のバランスを考えました。私たちのチームは、短い仮眠を取ることは事前に考えていましたが、チェックポイント7で2人のメンバーが5~15分の仮眠をとりました。最近の調査によると、1分、5分、15-18分といった短い仮眠が脳の休息にはいいそうです。20分を超えると、脳も睡眠段階にはいってしまい、ちょっとやそっとでは起きられなくなってしまいます。チェックポイントでどれだけ寝るかが、ゴールタイムに大きな影響を与えます。
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サポート隊について
続いて、サポート隊についてです。間違いなく、サポート隊は有益です。持ち運ぶ荷物や食料を減らしてくれ、私たちに元気を与えてくれます。ただ、私たちのように遠方に住んでいる人にとって、サポート態を探すのは大変でしょう。私たちはサポート隊を用意できませんでしたが、もし用意できていたら、チェックポイントですごした時間などを考えると、もっと早くゴールできたと思います。もちろん、記録を狙おうとしているわけではありませんが。しかし、私たちは荷物運搬サービスを利用し、非常に便利で効果的でした。お金はかかりましたが、レンタカーを借りて、友達にサポート隊をお願いするよりは安く済んだと思います。
また、歩き続けていると、各チェックポイントで待っている特別なご褒美があります。私たちの場合は、サポート隊はいなかったものの、チェックポイント4と7にあった食事、それに、ゴールにあった冷えたビールが最高のご褒美でした。
最後に、なぜオックスファム・トレイルウォーカーに参加するのかを忘れないでください。まず何よりも、私が思うに、ファンドレイジングとタフなコースを完歩するというふたつのチャレンジへの挑戦が、モチベーションの源となります。たとえあなたがプロアスリートであっても、早くゴールすることより、楽しむことに重点をおいてください。ただ歩き続けるだけでなく、もし素晴らしい景色に出会えば、立ち止まって景色を眺め、写真を撮ることも楽しんでください。そして、立ち止まって花の香りをかいでください。あなたから支援を受ける人々は、いつもそのような贅沢ができるわけではないのですから。
Jean-Yves Terreaultさんのトレイルウォーカー体験談はこちらからご覧になれます。